オヤジどもに告ぐ

数年前の話だ。金曜日の夜にラーメン屋さんでご飯を食べて帰ろうとしたところ、30〜40代ぐらいのサラリーマン数名がビールを飲みながらクダを巻いていた。ここまでは珍しくない光景だが、よくよく聞いてみるとグレタ・トゥーンベリさんの悪口を言っている。「グレタ、あいつはマジでやべえ」

 

会ったこともない外国の若者の悪口を言うことでストレス解消してる日本のサラリーマン可哀想過ぎるというかガチめに心配なのだが、これまでもこれからもけっして交わることはないであろう、極東のしがねえオッサンの飲み会の俎上にも上げられるグレタさんの発信力というかコンテンツ力には改めて感服するばかりだ(私からのアドバイスとしてはそうだなあ、ストレス解消にはやっぱり体を動かすのがいいと思う。ベタだけどジョギングは初期コストも少なく始められるのでおすすめだ。あとはミニシアターで映画鑑賞なんかどうだろう。シネコンと違ってうっとうしいCMはないし、空いてるし。そうそう、最近北海道旅行で泊まったホテルの目の前がシアターキノというとってもすてきな映画館だった。金大中とその選挙参謀をモデルにした『キングメーカー 大統領を作った男』が面白かった。イ・ソンギュンのハンサムさとイケボがいい具合に胡散臭く機能していてよかったな〜)。

 

こんな記事が作られてしまうことからもわかるように、某トランプ前大統領や某ヤフーニュースのコメント欄に生息しているタイプのシニカル・ヒステリー・オヤジどもにグレタさんは異様に敵視されている。なぜか。その理由は単純である。彼らは、

 

・生意気な若者
・主張をする女性
・外国人
環境主義

 

が死ぬほど嫌いで、これらすべての要素を兼ね備えたグレタさんはなんかもう最近流行りの言葉で言うとサタンだからである。

 

CHO(シニカル・ヒステリー・オヤジの略ね)は自慢話をウンウン聞いてくれて、社会にも家庭にも拠り所のない自分の溜飲を下げてくれる従順な若者なら大好きである。でも残念ながら若者たちは生得的に(オヤジにとって)生意気なので、CHOが嬉々として話す、本人の能力というよりも会社の看板があってはじめて成り立つ類の過去の成功体験を聞きながら「その話何回目だよ 知らない間に時かけてんのかと思ったわ草」などとツイートをしている。

 

インターネットの登場は、それまでマスメディアが独占してきた言論発表の場をわれわれ一般市民にも広く開放した。一方で、「馬鹿野郎、うんこ野郎」という様な、読むに耐えない低次元なテキストを電脳空間に多数生成したのもまた事実である。とりわけSNSやニュースサイトのコメント欄、レビューサイトは「いいね」ボタンにより投稿へのリアクションが可視化される。社会でも家庭でも話を聞いてもらえないCHOはようやく俺たちにも発言権が与えられたやったと欣喜雀躍し、あまつさえ自身が肯定されているかのような錯覚に陥ってしまった。こうして彼らは水を得た魚のごとく、もとい下痢便に群がるコバエのごとくブンブン飛び交いはじめたというわけだ。いいね!

 

まあこの際、おっさんが何食うてるかなんか1ミリも興味あれへんわこまめにメシの写真上げんなやオヤジや、なんぼほどインスタに長文で政治の話書くねんそれもうブログでやれやオヤジどものことはベーリング海のように冷たくも広い心をもって許そう。それよりも私が看過できないのは、隙あらば悪口ネジ込みオヤジである。たとえばこんな調子。

 

「ケイタ君が来店してくれました!最近の若者はまともに話もできない草食系が多いけど、彼はイケメンで話してて楽しい例外中の例外。ナイスガイです」

 

あのさ、そもそもなんだけど誰かを褒めるために誰かを貶す必要ある?それ若者ディスしたい前提で書いてるよね?ケイタくんも失礼しちゃうよな?「最近の若者は〜」論は加齢と不可分なものだから置いておくとして(ついに僕と同世代の30前後のやつも言うようになり始めた、あ〜あ年取るってやだねえ)あなたは何人の若者と会って話したわけって話。サンプリング調査で必要なサンプル数って最低1000人ですけど、それだけの若者と会話して特性や傾向をきちんとスプレッドシートにまとめた上での発言なのですか?

 

とまあ、こんな感じでTHO(タンナル・ヒステリー・オヤジ)の私はついついヒートアップしてしまう。でももうはっきり言って限界なんだ。「氷河期に地殻変動、地球の歴史を見ると温暖化なんて誤差レベルでしかない。人間のようなちっぽけな存在が地球環境に影響を与えられるという考えがおこがましい」なんていう、なになに急にどうしたのお前は神か?みたいな視点で語り始めるオヤジどもはすみやかに撃滅されねばならぬ。

 

オヤジどもに告ぐ。もう終わりにしよう。というか私が終わらせる。今から呼び出し場所を書いたチラシをプリントパックに20万部入稿して街じゅうにぺたぺた貼って回るからな。気分はもうアドルフ・カウフマンよ。文句あるならいつでも相手になってやるぞ馬鹿野郎、うんこ野郎。

 

 

 

改めて読み返したい名作。